「住宅ローンの返済が苦しい」「まとまった資金が必要だけれど、今の家には住み続けたい」——そんなときの選択肢のひとつが リースバック です。
この記事では、リースバックの仕組み・売却価格や家賃の決まり方・メリット・デメリット、よく似た「任意売却」との違い、そして後悔しないための注意点まで、ご相談を受ける実務の視点でわかりやすく整理します。
リースバックとは
リースバックとは、自宅を売却して資金を受け取りつつ、その後は買主に家賃を払って同じ家に住み続ける仕組みです。正式には「セール・アンド・リースバック」と呼ばれます。
ひとことで言うと、次の2つを同時に行う取引です。
- 売買:自宅を不動産会社や投資家に売却し、売却代金を一括で受け取る
- 賃貸借:売却後はその買主と賃貸借契約を結び、家賃を払って住み続ける
つまり「所有者」ではなくなりますが、「住んでいる人」であることは変わりません。引っ越す必要がなく、外見上は売却したことが周囲に分かりにくいのが特徴です。
国土交通省も2022年に「住宅のリースバックに関するガイドブック」を公表しており、リースバックの利用が増える一方で、契約内容や将来の収支計画への理解が不十分なまま契約してトラブルになる例があると注意を呼びかけています。
リースバックの仕組み|売却価格と家賃の決まり方
リースバックを理解するうえで一番大事なのが、売却価格と家賃がどう決まるかです。ここがあいまいなまま契約すると、後悔につながりやすい部分です。
売却価格の目安は「市場価格の60〜80%程度」
リースバックの売却価格は、市場価格(仲介で普通に売ったときの価格)の60〜80%程度が目安とされています。たとえば市場で3,000万円の価値がある家なら、リースバックでは1,800万〜2,400万円程度になるイメージです。
通常の売却より低くなりやすいのは、買主の多くが投資用として購入し、家賃収入による「利回り」を重視するためです。
家賃は「売却価格 × 期待利回り」で決まる
リースバックの家賃は、周辺の家賃相場ではなく、売却価格をもとに決まるのが一般的です。よく使われる計算の考え方は次のとおりです。
年間の家賃 = 売却価格 × 期待利回り(年6〜8%程度)(+必要経費) 月々の家賃 = 年間の家賃 ÷ 12か月
「期待利回り」とは、買主がその物件で1年あたりどれくらいの収益を見込むかを示す数値で、事業者によって6〜8%程度と幅があります。
たとえば売却価格が2,000万円、期待利回りが8%なら——
- 年間の家賃:2,000万円 × 8% = 160万円
- 月々の家賃:160万円 ÷ 12 = 約13.3万円
ここで重要なのが、売却価格を高くするほど家賃も高くなるという関係です。「手元資金を増やしたい」と売却価格を上げると、その分だけ毎月の家賃が重くなります。まとまった資金と、無理なく払える家賃のバランスを取ることが、リースバック成功のカギになります。
リースバックの主なメリット
1. 自宅に住み続けられる
最大の特徴です。売却後も賃貸として同じ家に住めるため、生活環境を変えずに資金を確保できます。お子さまの学区や、長年住み慣れた地域を離れずに済みます。
2. まとまった資金が一括で手に入る
売却代金を一括で受け取れるため、住宅ローンの返済、事業資金、医療・介護費用、老後資金などに充てられます。
3. 維持コストの負担がなくなる
所有者ではなくなるため、固定資産税や都市計画税、建物の修繕費などの負担がなくなります(その代わり家賃が発生します)。
4. 将来的に買い戻せる場合がある
契約によっては、将来資金に余裕ができたときに自宅を買い戻せる特約をつけられることがあります。ただし買い戻し価格は売却価格より高く設定されるのが一般的です。
リースバックのデメリット・注意点
メリットだけでなく、必ず確認すべき注意点もあります。ここを軽視すると後悔につながりやすいので、しっかり押さえましょう。
1. 売却価格は市場相場より低くなりやすい
前述のとおり、売却価格は市場価格の60〜80%程度が目安です。「できるだけ高く売りたい」が最優先なら、通常の仲介売却のほうが向いていることもあります。
2. 家賃が割高になることがある
家賃は売却価格をもとに決まるため、周辺の賃貸相場より高くなるケースがあります。長く住むほど総支払額は増えるので、「何年住むと総額いくらになるか」をシミュレーションしておくと安心です。
3. 住み続けられる期間に制限がある場合も
賃貸借契約が「定期借家契約」の場合、契約期間が満了すると更新されず退去を求められることがあります。「ずっと住めると思っていた」という行き違いは、リースバックで最も多いトラブルのひとつです。
4. 家賃の値上げを求められることがある
再契約のタイミングで、周辺相場の上昇などを理由に家賃の引き上げを提示される場合があります。更新・再契約の条件は契約前に確認しておきましょう。
普通借家契約と定期借家契約の違い
リースバックで「住み続けられる期間」を左右するのが、借家契約の種類です。ここはトラブルの核心なので、表で整理します。
| 普通借家契約 | 定期借家契約 | |
|---|---|---|
| 更新 | 原則として更新できる | 更新なし(期間満了で終了) |
| 住み続けるには | 基本的にそのまま住める | 期間満了時に再契約が必要 |
| 退去リスク | 低い | 再契約を断られると退去 |
「ずっと住みたい」のであれば、普通借家契約か、定期借家でも再契約の条件が明確かを必ず確認してください。口約束ではなく、契約書面で確認することが重要です。
自分の家だといくら? リースバック・任意売却まで、専門家に無料で試算・相談できます。
不動産のプロに無料相談リースバックの手続きの流れ
一般的には、次のような流れで進みます。
- 相談・査定:物件の価格と、想定される家賃の見積もりを受ける
- 条件の確認:売却価格・家賃・契約期間・買い戻し条件などをすり合わせる
- 契約:売買契約と賃貸借契約を結ぶ
- 決済・入居:売却代金を受け取り、そのまま賃貸として居住を継続
最短で数週間〜1か月程度で進むこともありますが、急ぐあまり条件確認を省くのは禁物です。
リースバックとよく比較される選択肢
任意売却との違い
- リースバック:自宅を売却して資金化し、住み続けるための仕組み
- 任意売却:住宅ローンの返済が困難なときに、金融機関の同意を得て競売を避けて売却する方法
任意売却の場面で、売却後も住み続けたい場合にリースバックを組み合わせることもあります。
リバースモーゲージとの違い
- リースバック:自宅を売却して資金化(所有権は手放す)
- リバースモーゲージ:自宅を担保に借入(所有権は残るが、原則として亡くなった後に売却して返済)
「所有権を手放すかどうか」「資金化か借入か」が大きな違いです。年齢条件や対象物件の制限もそれぞれ異なります。
こんな方に向いています/向いていません
| 向いているケース | 向いていないケース |
|---|---|
| 住み続けながら資金が必要 | とにかく高く売りたい |
| まとまった資金を早く用意したい | 住み続ける必要がない |
| 引っ越したくない事情がある | 毎月の家賃負担が難しい |
| 売却を周囲に知られたくない | — |
後悔しないためのポイント
国土交通省や国民生活センターも、リースバックを利用する際は次の点に注意するよう呼びかけています。
- 複数の事業者を比較する:価格や家賃の根拠を説明してもらい、1社だけで決めない
- 契約の種類と期間を確認する:普通借家か定期借家か、更新・再契約の条件はどうか
- 総支払額をシミュレーションする:何年住むと家賃総額はいくらになるか
- 買い戻し条件を確認する:買い戻せるのか、価格はいくらか
- 不明点は納得いくまで説明を求める:口約束ではなく書面で残す
まとめ
リースバックは、家賃・契約期間・買い戻し条件など、契約内容によって有利にも不利にもなる仕組みです。だからこそ、ご自身の状況に合った条件かどうかを、第三者の視点で確認することが大切です。
つなぎ家では、リースバックだけでなく、任意売却・相続・債務整理まで含めて、どの方法がご家族にとって最適かを一緒に考えます。無理な勧誘は一切ありません。まずはお気軽にご相談ください。
※本記事の価格・家賃・利回りはいずれも一般的な目安であり、実際の条件は物件・エリア・事業者により異なります。最新の情報は各事業者および公的機関でご確認ください。